前回はスピンバイクHAIGE HG-YX-5006の導入からZwiftとの接続までを解説した。今回は本機種ならではの課題とその解決方法について解説していく。
負荷が弱くてパワーを出せない
パワー・ウェイトレシオ(w/kg)が全てと言っても過言ではないZwiftでこれは致命的な問題である。
これに気づいた瞬間「このスピンバイクを買って失敗した」と思った。スピンバイクの負荷装置の構造は、重い金属(フライホイール)の円盤を回すもので、この円盤にフェルト生地を押し付けて負荷を調整できるようになっている。つまり、円盤が重ければ重いほど回すのにより強い力を必要とするとともに大きな慣性も働き、より実走に近い感覚を得られる。
しかしながら、購入したHAIGE HG-YX-5006のフライホイールは8kgとスピンバイクの中では軽量の部類で初心者向けのエントリーモデル。軽くエクササイズする分には十分だが、勾配7%程度のヒルクライムを想定してパワーをかけるとブレーキパッドの限界を超えてペダルがスルスルと回ってしまう。
下図のように、315w (5.7w/kg)を出すのにケイデンスを126rpmまで上げる必要があり、スピンバイク側の負荷が全然足りない。実走やローラー上では500w近く出ていてもおかしくない感覚である。
”負荷が弱い=ブレーキパッドを押し付ける力が足りない”ということ。
マジマジと負荷装置の機構を眺めていて思いついた。「金属棒を伸ばすか、ナットを分厚いものに交換すれば、より強くブレーキパッドを押し当てることができるのではないか?」と。ただし、そう都合よくサイズが合う金属棒は手に入らずナットも規格モノなので微調整が難しい。では、金属棒&ナットとプレートの間に厚みがあるものを挟み込んではどうかと。
そこで使うのがこれ。ビンディングシューズにクリートを取り付ける際に使う金具パーツ。
奇跡的にピッタリと収まった。クリート金具のネジ受け部分が良い具合にナットとかみ合ってくれ、負荷調整の力に応じてプレートを押し込んでくれる。
結果、これまで以上に強くブレーキパッドをフライホイールに押し付けることができるようになり、100rpmまでの常用ケイデンスで300w以上を出せるようになった。
この改造を施すことで無段階で負荷を上げていくことができるわけだが、実用的な範囲は350w程度までと考えておいた方がよい。それ以上負荷を上げるとフライホイールの慣性が効かなくなり、まともにペダルを回せなくなってしまう。
ロードバイクと異なる乗り味
負荷装置を改造することで300w以上の負荷をかけられるようにはなったが、実走さながらにペダルを回すにはちょっとしたコツが必要。無改造状態以上にブレーキパッドが強く押し付けられるため、フライホイールの慣性が働きにくくなり、低ケイデンス(70rpm以下)になるとペダリングがギクシャクしてくる。
これはGT-Roller M1.1のPTZ機能を使用したときの乗り味に近く、引き足を使ったスムーズなペダリングを意識しないとまともに回せない。
この感覚はバロックギア(楕円リング)にも近い。
ペダリングの練習と割り切れば悪くないかもしれないが、フライホイールの慣性が効かない分、やはり気持ちの良い乗り味とは言えない。そもそもスピンバイクはピストバイクと同様でフリー機構がないため、ロードバイクとは乗り味が異なる。そう割り切ってしまえば、あとは慣れの問題である。
まとめ
スピンバイクHAIGE HG-YX-5006の負荷が足りない問題については、クリートに付属されている金具を負荷装置に挟みこむことでお金と時間をかけずに解決することができる。
ただし、それでも実用的なパワーの範囲は350w程度(ケイデンス100rpm)まで。私のような軽量級ライダー(57kg)であれば十分な範囲だが、FTPが300wを超えるような方にはおすすめしない。また、Zwiftのレースでは瞬間的に10倍以上の出力でスプリント勝負をすることがあるため、Bクラス以上のレースで勝ちを狙いに行く方にもおすすめしない。
逆に、上述の条件に当てはまらない方にとっては十分パワートレーニングに活用できると思う。実際、この3か月間ほぼスピンバイクのみのトレーニングだが、FTPも順調に上昇しており、条件に合致する方には是非お勧めしたい。
2020年12月31日現在、スピンバイクでの走行距離は約2,000km。負荷装置に改造を施した状態で酷使しているものの、今のところ特に不具合は発生していない。(ブレーキパッドの顕著な減りは見られず)
ただし、メーカーが意図した使い方ではないので故障時に保証を受けられなくなる可能性があります。本改造を行う際は自己責任でお願いします。
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